
4年前、長男の離乳食を始めたとき。 深夜のキッチンで、10倍がゆにブレンダーを回していた私は、ふと頭に浮かんだんです。
「そういえば、イタリアの離乳食ってパスタなの?」
眠い頭で考えた、本当に他愛もない疑問でした。
だって、日本が米文化で離乳食も「おかゆ」なら、パスタの国イタリアは赤ちゃんに何を食べさせるんだろう?フランスは?アメリカは?
そこから始まった「世界の離乳食調べ」が、思いのほか面白くて。そして何より、「離乳食ってこんなに多様でいいんだ」という大きな気づきをくれました。
今、生後7ヶ月の双子(男女)の離乳食を始めている私たち夫婦。長男の時とは離乳食に対する考え方がずいぶん変わりました。
もっと柔軟に、もっと楽に、そしてもっと楽しく。
この記事では、これから離乳食を始めるパパママに、「日本の離乳食はこうだけど、こんな考え方もあるよ」という選択肢をお届けできればと思います。
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先に結論:離乳食に「絶対の正解」なんてない

世界を見渡すと、こんな事実が見えてきます。
- 開始時期も、開始食材も、国によってバラバラ
- 日本の「10倍がゆから段階的に」は、世界の中の「ひとつの正解」
- アメリカは鉄分強化シリアル、イタリアは本当にパスタ、フランスは野菜スープ
- でも、どの国の赤ちゃんも元気に育っている
つまり、「日本式マニュアル」から少しはみ出しても大丈夫ということ。
大事なのは、「うちの子と、うちの家族に何がしっくりくるか」を考えること。世界の離乳食事情を知っておくだけで、心がぐっと楽になるはずです。
日本の離乳食の「当たり前」は、実は最近のこと

日本の離乳食の基本スタイル
まず、日本の離乳食の基本をおさらいしましょう。
現在の日本では、厚生労働省が策定した「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改定版)に基づいて、多くの育児書や保健センターが離乳食を指導しています。
日本の離乳食の特徴:
- 開始時期:生後5〜6ヶ月頃
- 最初の一口:10倍がゆ(米:水=1:10を柔らかく炊いて裏ごし)
- 進め方:ゴックン期→モグモグ期→カミカミ期→パクパク期と、月齢に応じて段階的に形状と固さを変える
- 味付け:だし(かつお・昆布)で風味をつけ、素材の味を活かす
- 与え方:親がスプーンで食べさせる
この方法、とても丁寧で日本らしいですよね。米を主食とする文化が色濃く反映されていて、「おかゆ」から始めるのは実に理にかなっています。
この「当たり前」が確立したのは、実は最近のこと
でも、この離乳食スタイルが日本全国で標準化されたのは、実は2000年代後半以降なんです。
2007年に厚労省が最初の「授乳・離乳の支援ガイド」を策定し、2019年に改定されて現在の形になりました。つまり、今の「10倍がゆから始めて月齢ごとに段階を上げる」という方法が全国的に浸透したのは、まだ15年ほどの歴史しかありません。
それ以前はどうだったかというと…
江戸時代:
- 母乳中心で、離乳完了は数え年で3〜4歳(満2〜3歳頃)
- 歯が生え始めたら「粥汁(かゆじる)」や「噛み含め」(大人が噛んだものを口移し)
明治・大正時代:
- 西洋医学の導入で「噛み含め」は衛生面から否定される
- 「重湯(おもゆ)」や牛乳が推奨されるように
昭和時代(戦後〜):
- 1958年頃から「10倍がゆ」が主流に
- 1960〜70年代にベビーフードが普及
- 1980年代にアメリカの育児書「スポック博士の育児書」の影響で、生後3ヶ月頃から果汁を与えるスタイルが流行
2000年代以降
- 2007年に「授乳・離乳の支援ガイド」策定
- 2019年の改定では、アレルギーや果汁の扱いがアップデートされ、
今の「柔軟でエビデンスベースなやり方」になってきた
つまり、離乳食の「正解」は時代とともに変わり続けているんです。今の方法が絶対ではないということを、まず頭に置いておくといいかもしれません。
世界の離乳食を覗いてみたら、想像以上に違っていた

アメリカ:鉄分重視!最初はシリアルから
アメリカでは、「鉄分強化ライスシリアル」が最初の一口として圧倒的に定番。
粉末状の米のシリアルを母乳やミルクで溶いたものからスタートします。なぜなら、生後6ヶ月以降の赤ちゃんは鉄分が不足しがちだから。
その後は、瓶詰めやパウチの市販ベビーフード(ガーバーなど)を合理的に活用。「手作り=愛情」という価値観はそれほど強くなく、栄養価が計算された市販品を賢く使う文化です。
また、BLW(Baby-Led Weaning:赤ちゃん主導の離乳食)も人気。ペーストをスプーンで与えるのではなく、柔らかく茹でた野菜スティックなどを赤ちゃん自身に掴ませて食べさせます。
イギリス:BLW発祥の地
そのBLWの発祥地がイギリス。「赤ちゃんは自分で食べたいものを選び、自分のペースで食べる」という考え方です。
最初から赤ちゃんが握れる大きさの固形食(フィンガーフード)を用意。柔らかく茹でたブロッコリーの房、スティック状のトースト、バナナなど。赤ちゃんがぐちゃぐちゃにしても、それも「食べる練習」の一部と考えます。
フランス:離乳食は「味覚の教育」
さすが美食の国。離乳食は「味覚の教育(L'éducation au goût)」として捉えられています。
最初の食材は米ではなく野菜のスープやピューレ。ニンジン、インゲン、ほうれん草など、一種類ずつ丁寧に味を覚えさせます。
面白いのは、砂糖や塩は控えめにしつつも、バター、チーズ、ハーブは比較的早い段階から使うこと。「豊かな味覚を育てる」ことが重視され、「食べなくても、見るだけ、触るだけでOK」と寛容に構えます。
イタリア:答え合わせ、やっぱりパスタでした!
そして、最初に疑問に思ったイタリア。
結論から言うと、やっぱりパスタです。
「ブロード(野菜スープ)」に米の粉や、「パスティーナ」と呼ばれる極小の粒状パスタを入れたものが主流。仕上げには良質なオリーブオイルとパルメザンチーズをかけます。
赤ちゃんのうちから地中海食文化を大切にする、イタリアらしいスタイルです。
ドイツ:全部混ぜちゃう合理主義
ドイツは非常に真面目で合理的。
定番メニューは、昼食に「野菜・ジャガイモ・肉のピューレ(Brei)」。日本のように「主食・副菜・汁物」と分けず、全部混ぜて一皿にします。
「栄養バランス完璧なら、見た目は気にしない」というゲルマン魂を感じる実用性です。
中国:お粥文化だけど、日本とはちょっと違う
中国も日本と同じく「お粥(Congee)」文化ですが、日本よりも早くからお粥に肉や魚の出汁を使ったり、具材を混ぜたりします。
蒸した卵(茶碗蒸しのようなもの)もよく使われ、「温かいものは体に良い」という思想のもと、手作りや温かい食事が好まれます。
世界から学ぶ、もっと柔軟な離乳食のヒント

ヒント①:鉄分を意識してみる(アメリカの知恵)
日本の10倍がゆは消化に優しいですが、鉄分がほとんど含まれていません。
特に母乳育児の場合、鉄分不足になりやすいので、
- レバーペースト
- 赤身肉や魚
- 鉄分添加のベビーフード
などを、少し意識して早めに取り入れるのもアリです。
ヒント②:「全部混ぜ」でもOK(ドイツ流)
赤ちゃんが疲れて食べない日、双子が同時に泣いている日。
そんな日は、ご飯・野菜・たんぱく質を全部混ぜたリゾット風やおじやで全く問題なし。栄養が入ればOKです。
ヒント③:市販品への罪悪感を捨てる(アメリカ・ヨーロッパ流)
欧米では市販ベビーフードは「安全管理された優れた食品」として積極的に活用されています。
疲れている時、外出時などは市販品に頼ってOK。むしろ栄養バランスが計算されていて、衛生的です。
ヒント④:食事を楽しむ(フランス・イタリア流)
「何グラム食べたか」より「食事の時間を楽しめたか」を大切に。
イタリアのように少し風味を足して食欲をそそったり、フランスのように「一口舐めたからOK!」と大らかに構えたり。離乳食の目的は、栄養摂取だけでなく「食事が楽しいものだと知ること」でもあります。
双子育児で実感した、「柔軟な離乳食」のありがたさ

長男の時は、育児書通りに進めようと必死でした。10倍がゆを丁寧に裏ごしして、1さじずつ記録して。完全に「離乳食プロジェクトマネージャー」と化していました。
でも今、双子の離乳食を始めている私たちは、もっと柔軟です。
- 疲れている時は市販のベビーフードをフル活用
- 早めに魚や豆腐も取り入れる(鉄分を意識)
- 全部混ぜたおじや風も積極的に
- 食べなくても「見てるだけでOK」と割り切る
長男の時と比べて、親のストレスが格段に減りました。そして、双子も楽しそうに食べています。
「こうあるべき」という固定観念から少し自由になるだけで、離乳食がこんなに楽になるんです。
まとめ:世界中の赤ちゃんが、違う方法で元気に育っている

日本の離乳食は、丁寧で素晴らしいものです。でも、それだけが唯一の正解ではありません。
- アメリカの赤ちゃんはシリアルから
- イギリスの赤ちゃんは自分で手づかみ
- イタリアの赤ちゃんはパスタを食べ
- フランスの赤ちゃんはチーズを食べている
みんな違うけど、ちゃんと育っています。
これから離乳食を始めるパパママへ。
世界の離乳食を知っておくだけで、もっと柔軟に、もっと楽に、そしてもっと楽しく離乳食を進められるはずです。
育児書通りにいかなくても、大丈夫。 赤ちゃんのペースで、パパママのペースで。
みんなで食卓を囲む時間が、少しでも楽しくなりますように。
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